総論;
平成31年度厚生労働省予算案における重点事項において、人づくり改革における予算案が発表されました。
基本方針;人材投資の強化や女性、高齢者、障害者等の多様な人材の活躍促進
全ての人材がその能力を存分に発揮できる社会や個々人の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、リカレント教育をはじめとした人材育成の強化、女性・若者・高齢者・障害者等の就労支援等を実施する。また、人手不足解消に向けて人材確保支援の総合的な推進を図るとともに、外国人材受入れのための環境を整備する。
1 リカレント教育の拡充等による人材育成の強化、技能を尊重する機運の醸成 1,220億円(966億円)
リカレント教育とは・・・義務教育または基礎教育の修了後,生涯にわたって教育と他の諸活動(労働,余暇など)を交互に行なう教育システム
(1)リカレント教育の拡充 1,203億円(960億円)
① キャリアアップ効果が高い講座の給付率引上げ等の教育訓練給付の拡充
② 中小企業等の労働者を対象にした基礎的ITリテラシーの職業訓練の実施
③ 正社員就職の実現を図る長期高度人材育成コースの推進
④ 事業主によるe-ラーニングを活用した教育訓練の人材開発支援助成金の対象への追加
(2)学び直しに資する環境の整備 532億円(395億円)
① 長期の教育訓練休暇制度を導入した事業主への人材開発支援助成金による支援の実施
② 人材育成ニーズに対応した教育訓練プログラムの開発
③ 企業におけるキャリア形成支援策の普及とキャリアコンサルティングの質の向上
④ 人事・経理等のホワイトカラー職種の職業能力診断ツールの開発に向けた調査・研究ホワイトカラー職
⑤ 企業における技術・技能の評価に関する活用実態の把握
⑥ 「企業のマネージメント力を支える人材育成強化プロジェクト事業(仮称)」の実施【新規】 25百万円
(3)技能を尊重する機運の醸成 5.3億円(5.5億円)
① 2023 年技能五輪国際大会の我が国への招致
② 技能五輪国際大会に向けた「選手強化策パッケージ」の策定
2 人材確保支援の総合的な推進、地域雇用対策の推進 410億円(368億円)
(1)人材確保支援の充実 61億円(47億円)
福祉分野のほか、建設業、警備業、運輸業など、雇用吸収力の高い分野でのマッチング支援を強化するため、ハローワークの「人材確保対策コーナー」を拡充し、関係団体等と連携した人材確保支援の充実を図る。また、人手不足の中小企業を中心とした求人者のニーズを踏まえた求職者の掘り起こしを積極的に展開し、労働市場の需給調整機能の強化を図る。さらに、中途採用の拡大に取り組む事業主に対する助成により、転職・再就職者の採用機会の拡大及び人材移動の促進を図る。
(2)雇用管理改善による「魅力ある職場づくり」の促進等 258億円(248億円)
労働人口の中長期的な減少が見込まれ、全般的に雇用失業情勢が改善し、人材不足分野が顕在化している中、事業主の雇用管理改善に対する助成や「働き方改革推進支援センター」等における相談支援により、「魅力ある職場づくり」の促進等を図る。介護労働者の身体的負担軽減に資する介護福祉機器の導入を促進し、労働環境の改善を図る。介護・保育分野における人材確保のため、賃金制度の整備を行う事業主に対する助成を通じて職場定着の促進を図る。
(3)地方自治体等と連携した地域雇用対策の推進 92億円(72億円)
産業政策と一体となって正社員雇用の創造に取り組む都道府県を支援する地域活性化雇用創造プロジェクト等により、地方自治体と連携した取組を行い、地域特性を生かした雇用創出や人材育成を推進する。市町村・経済団体等で構成される協議会が提案する自主性・創意工夫ある雇用活性化の取組の中から、地域における人材や雇用の場の維持・確保等が期待できるものを選抜・委託する「地域雇用活性化推進事業(仮称)」を実施し、地域の活性化を図る。UIJターン者を採用しようとする事業主への支援により、地域の中小企業等の人材確保を図る。
3 雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援 196億円(206億円)
(1)転職・再就職者の採用機会拡大・受入れ企業支援 121億円(130億円)
(2)転職・再就職の拡大に向けた見える化の推進 47億円(49億円)
(3)ハローワークにおけるマッチング機能の充実 28億円(27億円)
4 女性の活躍推進等 492億円(482億円)
(1)女性の活躍促進に向けた職業能力開発の推進 168億円(166億円)
子育て女性や社会人のリカレント教育講座や土日・夜間講座、完全e-ラーニング講座等対象講座の多様化、利便性の向上を図る。子育て女性等の早期再就職のため、託児サービス付き訓練などのハロートレーニング(公共職業訓練)の充実を図る。
(2)女性活躍推進法の実効性確保 6.6億円(6.6億円)
女性活躍推進法に基づく取組が努力義務である300 人以下の中小企業について、相談支援や助成金の活用に加え、中小企業単独では実施が難しい女性管理職育成のためのセミナーの実施により、行動計画策定や「えるぼし認定」(※)取得に向けた支援を行い、女性活躍推進の取組の加速化を図る。
女性の活躍状況に関する情報等を掲載している「女性の活躍推進企業データベース」について、学生をはじめとした求職者等の利便性の向上を図るため機能強化を行うとともに、多くの企業の情報掲載が進むよう働きかけを行うことで、企業情報の見える化を更に推進する。
※ えるぼし認定:女性活躍推進法に基づき、女性の活躍に関する状況が優良な企業について、厚生労働大臣が認定する制度
(3)総合的なハラスメント対策の推進40億円(27億円)
(4)仕事と家庭の両立支援の推進 276億円(281億円)
ハローワークにおけるマザーズコーナーの拠点数を拡充し、子育て女性等の再就職支援を充実する。
男性の育児参加を促すための全国的なキャンペーン、企業や企業に働きかけを行う自治体を対象としたセミナー等により、男性の育児休業等の取得促進を図る。
介護離職防止に取り組む事業主に対する助成金について、支給内容の充実や支給上限の拡大などにより、支援の拡充を図るとともに、育児・介護等により離職した者の復職等を支援する助成金の支給等により、仕事と家庭の両立支援に積極的に取り組む事業主等を支援する。
(5)女性医療職等のキャリア支援52百万円(44百万円)
5 若者・就職氷河期世代に対する就労支援等176億円(172億円)
(1)「学卒全員正社員就職」に向けた大学等と連携した就職支援の強化84億円(82億円)
「学卒者全員正社員就職」実現に向けて、大学等との連携強化により支援対象者の確実な把握を行い、特別支援チーム等を活用した新規学卒者等の支援対象者に対する就職実現までの一貫した支援の強化を図る。
(2)就職氷河期世代を含む不安定就労者への支援46億円(47億円)
いわゆる就職氷河期に就職時期を迎えた不安定就労者等に対し、職業訓練の実施や雇い入れた事業主に対する助成を行うとともに、ハローワークにおける担当者制によるきめ細かな職業相談等を実施する。
就職氷河期世代等の無業者を対象に地域若者サポートステーションの就労支援と自治体等の福祉支援をワンストップ型で継続的な提供を可能とする体制の整備や支援の充実を図るモデル事業を創設する。
(3)若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対応 6.6億円(4.1億円)
常設のフリーダイヤル「労働条件相談ほっとライン」や、労働条件に関する悩みの解消に役立つ労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」を引き続き運営する。これまでに作成した高校生、大学生等の若い労働者にかかる指導用教材を活用した労働法教育の実施方法に関するセミナーを開催するとともに、労働法教育やブラックバイト対策の必要性等にかかるシンポジウムを開催する。
ハローワークや職業紹介事業者等の全ての求人を対象に、一定の労働関係法令違反を繰り返す求人者等の求人を受理しないことを可能とするなどの職業安定法改正法の円滑な施行に向けて、事業主や労働者等へ周知する。
(4)若年無業者等の社会的・職業的自立のための支援の推進40億円(39億円)
地域若者サポートステーションと関係機関との連携強化等による、若年無業者等に対する切れ目のない就労支援の推進に加え、就職氷河期世代等の無業者を対象に、地域若者サポートステーションの就労支援と自治体等の福祉支援をワンストップ型で継続的な提供を可能とする体制の整備や支援の充実を図るモデル事業を創設するなど、地域若者サポートステーション事業の強化を図る。
若年無業者の定義と3つのタイプ
ここでの若年無業者の定義は、年齢は15歳以上40歳未満で、高校や大学などの学校や予備校、専門学校などに通っておらず、独身であり、普段収入を得る仕事に就いていません。(厚生労働省の定義では15歳以上35歳未満)
この若年無業者は、
<求職型>就職を希望していて、実際に活動を行っている人
<非求職型>就職を希望してはいるが、活動を行っていない人
<非希望型>就職を希望していない人
の3タイプに分かれており、この全てを合わせて、現在日本には若年無業者が約220万人いるとみられています。
6 高齢者の就労支援・環境整備 296億円(274億円)
(1)初めて中高年齢者を採用する企業に対する助成金の拡充23億円(18億円)
これまで学卒採用中心であった企業が、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、中途採用を拡大した場合の助成金について、中高年齢者を初めて中途採用した企業への助成を拡充する。
(2)高齢者の就業実現に向けた「生涯現役支援プロジェクト(仮称)」の実施 199億円の内数
大都市圏における特設シニア窓口の設置による就業希望者の取込み、在職中からのセカンドキャリア設計支援、高齢女性への戦略的広報等により就業ニーズの具体化を促す「生涯現役支援プロジェクト(仮称)」を実施する。
(3)マッチングによるキャリアチェンジの促進29億円(33億円)
65 歳以上の再就職支援に重点的に取り組むため、ハローワークに設置する「生涯現役支援窓口」を増設し、65 歳以上が就業可能な短時間の求人開拓等を推進する。
(4)継続雇用延長等に向けた環境整備 46億円(50億円)
65 歳を超える継続雇用や65 歳以上の定年引上げ等に対する助成措置のほか、高齢者に係る成果を重視した賃金制度や能力評価制度の構築に取り組む企業に対する助成により、継続雇用延長等に向けた環境整備を図る。また、65 歳超雇用推進プランナー等による提案型の相談・援助による支援を行う。
(5)地域における多様な就業機会の確保198億円(173億円)
地域の高齢者の就業促進を図るため、地域の様々な機関が連携して高齢者の就業を促進する「生涯現役促進地域連携事業」を拡充する。シルバー人材センターを活用する高齢者が人手不足の悩みを抱える企業を一層強力に支えるため、シルバー人材センターにおけるマッチングの機能強化等を推進する。
7 障害者の活躍促進 191億円(182億円)
(1)公務部門における障害者雇用の推進3.4億円
公務部門における障害者雇用を推進するため、各府省等向けのセミナー・職場見学会の開催、職場定着支援等を実施する。また、厚生労働省においても、障害特性に応じた個別支援、障害に対する理解促進のための研修等に取り組む。
(2)障害者の雇用の質の向上を図るための就労環境の整備等の推進102億円(100億円)
支援機関や企業等が障害特性等の情報を共有し、適切な支援や配慮を講じるための情報共有フォーマット(就労パスポート)を整備する。障害者就業・生活支援センターについて、地域の支援機関等に対して蓄積したノウハウを提供するなど、地域の就労支援拠点の質的向上を図る。ICT 等を活用した地方の障害者のテレワーク勤務を推進するため、好事例の周知を行う。精神・発達障害者しごとサポーターにより、職場における精神障害者・発達障害者を支援する環境づくりを推進する。
(3)法定雇用率の引上げに対応した、障害者雇用ゼロ企業を含む中小企業に対する支援の推進168億円(161億円)
障害者就業・生活支援センターについて、地域の支援機関等に対して蓄積したノウハウを提供するなど、地域の就労支援拠点の質的向上を図る。障害者雇用ゼロ企業等における取組を推進するため、企業向けチーム支援の体制の整備や、障害者雇用に知見のある企業OB、企業在籍型ジョブコーチ等の紹介・派遣等を推進する。ジョブコーチ支援の充実・強化など、中小企業等による障害者雇用の促進に向けた支援を強化する。精神障害者等に対する就労支援を推進するため、精神科医療機関とハローワークとの連携や、トライアル雇用における支援等を行う。
(4)精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に対応した就労支援の強化 150億円(144億円)
精神障害者等に対する就労支援を推進するため、精神科医療機関とハローワークとの連携や、トライアル雇用における支援等を行う。精神・発達障害者しごとサポーターにより、職場における精神障害者・発達障害者を支援する環境づくりを推進する。精神障害者、発達障害者、難病患者である求職者についてハローワークに専門的職員を配置するなど多様な障害特性に対応した就労支援を推進する。ICT 等を活用した地方の障害者のテレワーク勤務を推進するため、好事例の周知を行う。精神障害者等の受入体制を整備するため、職業能力開発校において精神保健福祉士等の相談体制を強化するとともに、精神障害者を対象とした職業訓練をモデル的に実施する。
(5)農福連携による障害者の就農促進2.7億円(2.7億円)
8 外国人材受入れの環境整備等 108億円(57億円)
(1)新たな在留資格により受け入れる外国人材の雇用管理体制の整備8.1億円
新たな在留資格により外国人材を受け入れるにあたり、適正な雇用管理の確保を図るため、事業所訪問により雇用管理状況の確認、改善のための助言・指導等を行うとともに、外国人雇用状況届出の適正な履行を確保するための体制を整備する。
(2)外国人労働者の労働条件等の相談・支援体制の強化 13億円(1.8億円)
外国人労働者に係る労働相談体制の強化を図るとともに、外国人労働者が容易に理解できる視聴覚教材等の作成により、労働災害防止対策を推進する。
(3)高度外国人材の受入れの強化 19百万円(18百万円)
企業のイノベーションに結びつく高度IT 人材を積極的に確保するため、海外現地において日本の求人情報等を活用したマッチング支援の在り方を具体的に検討する。
(4)外国人留学生等の就職支援【一部新規】 16億円(13億円)
① 外国人留学生等に対する相談支援体制の強化 7.9億円(7.1億円)
外国人留学生等と企業とのマッチングの機会を設けるため、ハローワークの外国人雇用サービスセンター等の増設など、相談体制の強化を図る。
② 外国人就労・定着支援研修の実施 7.8億円(5.5億円)
外国人就労・定着支援研修事業において、日本企業に就職する外国人留学生等の職場定着を促進するため、敬語などの実践的な日本語コミュニケーション能力の習得等を支援する研修等を実施する。
(5)定住外国人等に対する就職支援 15億円(13億円)
① 日系人及びその子弟を含む、定住外国人等に向けた職業相談の実施
定住外国人が多く所在する地域を管轄するハローワークにおいて、専門相談員を配置し、通訳を活用した職業相談や、雇用管理に関する相談支援等を実施する。通訳不在のハローワーク等における多言語対応力の強化を目指すため、10 か国語の電話通訳が可能なコールセンターによる支援を実施する。
② 外国人就労・定着支援研修の実施
外国人就労・定着支援研修事業において、身分に基づく在留資格の外国人等を対象に、レベルに応じた日本語能力のほか、ビジネスマナー等の知識の習得を目的とした研修等を実施する。
(6)外国人技能実習に関する実地検査や相談援助等の体制強化 77億円(37億円)
外国人技能実習制度の適正な運用を図るため、監理団体・実習実施者に対する実地検査及び外国人技能実習生に対する相談援助等を実施する外国人技能実習機構の体制強化等を実施する。
9 生活困窮者等の活躍促進 90億円(94億円)
(1)ハローワークにおける生活困窮者の就労支援 83億円(88億円)
ハローワークを通じて就職した生活保護受給者・生活困窮者等の職場定着支援の強化等を図り、就労による自立を促進する。
(2)生活困窮者の自立・就労支援等の推進438億円の内数(432億円の内数)
(3)刑務所出所者等の就労支援 7億円(6.4億円)
「再犯防止推進計画」を踏まえ、ハローワークと矯正施設・保護観察所等が連携して実施する「刑務所出所者等就労支援事業」について、矯正施設への相談員の駐在を拡充する等、その取組を強化する。
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