【特許と実用新案の違い】
保護対象、権利化までの手続き、存続期間、権利行使の各場面で両者は異なります。以下、それぞれ具体的に見てゆきましょう。
特許 | 実用新案 | |
保護対象 | 物・方法の発明 | 物品形状等の考案 |
実体審査の有無 | 有 | 無 |
取得までの時間 | 30か月前後 | 4ヶ月前後 |
権利の存続期間 | 出願日から20年間 | 出願日から10年間 |
権利行使 | 排他的権利 | 技術評価書を提示したうえで警告 |
[保護対象]
特許は「物(プログラムを含む)」と「方法(単純方法/例:検査方法、製造方法/例:クロレラの製造方法)」を保護対象とし、実用新案は「物品の形状、構造又は組合せ」を保護対象とします。
特許では、プログラムは物に含まれる概念であって保護対象になりますが、実用新案では、プログラムは含まれませんし、方法は保護対象にはなっていません。
[権利化までの手続等]
特許は、出願後3年以内に「出願審査の請求」という手続き(所定の書面の提出と印紙代の納付)を行う必要があります。この請求を待って初めて特許性を具備しているか否かが審査官によって判断されます。内容にもよりますが、特許庁からのアクションがあるまで大凡30ヶ月程度を要します。
一方、実用新案では、方式的な審査は行われますが、特許のような実体的な審査は行われません。よって、出願後、4(~6)か月程度で登録されます。
[権利の存続期間]
特許は、特許権が成立すると、原則出願後20年は権利が存続しますが、実用新案では、出願後10年で権利は消滅します。
[権利行使]
特許権は、審査を経て成立した独占排他権なので、侵害行為に対しては差し止めや損害賠償といった権利行使を行うことができます。
一方、実用新案は、実体審査を経ずに登録に至っているため保護すべき権利か否か明らかではありません。そこで、事前に「実用新案技術評価書」を入手し、提示したうえでないと権利行使することができないことになっています。評価は1~6に分かれており、評価の内容によっては権利行使が困難になる場合があります。
【まとめ】
特許でも実用新案でも保護対象となっている場合に、どちらで手続きを行うかについては、発明(考案)の性質や企業戦略など色々な要素を検討する必要があります。
他社からの参入障壁を築くことを主な目的とする場合は、無審査で成立する実用新案権より特許権の成立を目指すべきでしょう。
一方、権利の安定化より早期権利化を望む特別な事情があるケース、出願の事実を重視するケース、一定の抑止力が働けば良いという防衛的な意味で出願するケースなどは、実用新案を選択すれば良いでしょう。
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