【商号と商標の相違点】
商号と商標の違いを詳しく見てゆきましょう。また、商号を商標として登録できるのか、できるとすれば、その意味はどこにあるのか、についても検討してみます。
[商号]
商号は、法務局で登記しますが、同一の商号は、同一住所でない限り商号登記は可能です。よって、日本中に同じような商号の会社が数多く存在しています。登記しても、同一所在地以外では他人の同一商号の使用を妨げることはできませんが、他人が不正の目的をもって他の商人や他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用した場合に、過料が科されます。
[商標]
商標は、特許庁で登録しますが、登録と同時に独占排他権が生じます。我が国では商標登録を受けた者だけがその商標を使用することができ、他人がこれと同じ商標や類似の商標について使用することも、登録を受けることもできません。無断で自己の商標権を侵害する者に対しては、差止請求、損害賠償請求といった権利行使が認められます。
【商号商標】
企業が、自社商品を宣伝する場合には、その商品が自社の取扱商品であることを知らしめることが普通なので、商号が出所識別標識として使用されることは往々にしてあります。会社名と商標を一致させることで、商品広告と企業広告が同時に行えるため、商号を商標として登録し、使用する企業は数多く見られます。
商号商標の登録例:
「株式会社クボタ」(登録第2621121号)
「株式会社シマノ」(登録第2572711号)
【商号決定の際に留意すべき事項】
会社設立時に、商標調査を行わずに自社の社名を決定してしまうと、後々思わぬ事態に巻き込まれる場合があります。即ち、自社の商号と類似の商標(商標権)を保有する競業会社から、商標としての商号の使用中止を求められる場合があります。よって、会社名の決定に際しては、営業範囲を考慮して商標の先行調査を行っておくことは重要です。さらに、将来にわたって安心して商号を使用し続けるのであれば、商号を商標登録しておくことが望まれます。
尚、商標法上、ありふれた名称で識別力のない商標は登録を受けることができません(商標法3条1項4号)。例えば、「山田株式会社」という商号は原則として登録を受けることができません。不正競争防止法でも、一定の要件下で商号は保護されますが、周知・著名なものに限られますので、需要者に名前が知れ渡っていない商号は保護されません。
今では商号にローマ字表記を採用することが認められています。海外進出を視野に入れた起業であれば、世界に通じるローマ字での商号の採用と、当該商号商標を日本と主要な国々で調査し、登録を受けておくことも重要となるでしょう。
【まとめ】
会社設立の際には、商号についての商標先行調査と、商号商標の登録をご検討頂きたいと思います。まずは専門家にご相談下さい。
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