【意匠権取得がもたらすもの】
意匠権を取得することで、特許などと同様、自ら独占実施できるほか、実施権(通常実施権・専用実施権)での権利の活用も可能です。ここでは、実施権について詳しく見てゆきましょう。
一方、意匠権は、類似の意匠にまでその効力が及びます(意匠法第23条)。登録意匠と他人の意匠との類否判断がどのようにして行われるか、合わせて見てゆきましょう。
【実施権】
権利者以外が登録意匠を実施(製造、販売など)しようとする場合、ライセンス契約を結び「実施権」を取得することが必要です。
[専用実施権]
ライセンスを受けた者(専用実施権者)が独占してその登録意匠を実施することができ、専用実施権を設定した範囲内では、意匠権者といえども、その登録意匠を実施することはできません。この点、意匠権者は十分に注意が必要です。
[通常実施権]
一方、同じ範囲について、複数人に(独占的でない)実施権を設定することができ、そのような実施権を通常実施権といいます。
なお、専用実施権は、特許庁の原簿への登録が効力発生要件となっていますが、通常実施権は当事者間の合意に基づき発生します。
【類否判断】
意匠の類否判断は、「物品」と「形態」の2つの要素に基づき行われます。
形態同一 | 形態類似 | 形態非類似 | |
物品同一 | 同一意匠 | 類似意匠 | 非類似意匠 |
物品類似 | 類似意匠 | 類似意匠 | 非類似意匠 |
物品非類似 | 非類似意匠 | 非類似意匠 | 非類似意匠 |
物品については、次の通りです。
・同一物品:用途と機能が共通する物品;「ハイソックス」と「ルーズソックス」
・類似物品:用途は同じで、機能が異なる物品;「靴下」と「靴下カバー」
・非類似物品:用途が相違する物品;「靴下」と「帽子」
意匠権は、上記表の「同一意匠」及び「類似意匠」に及びます。
また、「形態」とは、形状、模様若しくは色彩またはこれらが結び付いたものをいいます(意匠法第2条1項)。形状とは外から見た物品の形、模様とは、物品の表面に施された装飾、色彩とは単一色での着色をいいます(2色以上は模様に該当)。
では、次に形態の類否判断の手順について見てゆきます。
第1ステップ
登録意匠と、侵害物品がどのような形態をしているのか、について認定します。
「基本的構成態様」(大枠)を認定したうえで、「具体的構成態様」(細部)を認定します。
第2ステップ
各意匠の「要部」認定を行います。「要部」とは、需要者の注意が惹きつけられる部分のことをいいます。
第3ステップ
登録意匠と侵害物品とが、この「要部」において共通するか否かを主に観察しつつ、意匠全体としてその「美観」が共通するか否かを判断します。
一般には、「要部」が共通していれば、形態は同一か類似といえるので、物品が同一又は類似であれば、両意匠は類似となります。一方、「要部」が共通しなければ、通常は非類似と判断されます。
【権利行使】
無断で自身の登録意匠を実施する者に対して、その実施の中止を申し入れたり(差止請求)、無断実施により被った損害の賠償を求めたりすることができます(損害賠償請求)。
【まとめ】
平成19年4月1日以降の出願より、権利の存続期間が設定登録日から20年となったことから、意匠登録の利活用に意味が増しました。
他者の意匠が、ご自身の登録意匠に類似しているか否か、その他意匠権に関することでご不明な点は、専門家へご相談下さい。
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