特許公開公報,特許公報,国際公開公報,再公表特許,公表特許公報。それぞれどういう違いがあるのかご存知でしょうか。各公報の意味合いを正しく理解することで、危機を回避できる一方、これらを読み誤ると無駄な投資となったり、他人の権利を侵害することになったりしかねません。以下に、詳しくみてゆきます。
【特許公開公報】
特許出願の日から1年6ヶ月を経過すると発行される文献です。出願時の内容を公示するにすぎませんので、万一、自社製品がこれに抵触する場合でも直ちに自社実施を中止する必要はありません。その理由は、当該出願が特許になる場合には、出願当初の「特許請求の範囲」(独占排他権を主張する書面)の内容とは異なる内容になることが往々にしてあるからです。但し、経過情報を定期的に監視し、進捗を管理する必要はあるでしょう。また、当該特許出願の権利化を阻止すべく特許庁に対して情報提供を行うことも検討されると良いでしょう。
・表示例:特開20XX-XXXX、特開平XX-XXXX、昭XX-XXXX、平XX-XXXX
【特許公報】
審査の結果、特許すべきものと判断された出願を公示する公報です。特許公報中「特許請求の範囲」に記載された内容が、独占排他権としての特許発明です。前述の通り、審査の途中で補正されることも多いため、公開公報とは内容が異なることが多々あります。万一、自社製品がこれに抵触する場合、一旦、実施を中止し、その後の対応を検討する必要があります。
尚、特許公報が発行された後、当該特許が他人に譲渡された場合でも、譲受人を特許権者とした特許公報は発行されません。現時点での特許権者を調べるためには、特許庁から特許原簿を取り寄せて内容を確認する必要があります。Web上でも確認できますが、データ更新との関係上、時間的なズレが生じます。
・表示例:特許第XXXXXXX
また、「公告公報」という公報がありますが、これは旧法下での付与前異議申立の対象となる公示方法で、権利を確定させる予定としての公示です。大正11年~平成8年まで発行されていて、現在は公告制度が廃止されたため発行されていません。
・表示例:特公平XX-XXXX
【国際公開公報】
国際公開公報は、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty、以下PCTと称す。)に基づいて国際出願されたものが、優先日から原則18ヶ月の時点で、国際出願を管轄する官庁である、スイスのジュネーブにある世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization、以下WIPOと称す。)の内部機関である国際事務局により公開されるものです。この国際公開の公報の情報は特許庁になく、WIPO(World Intellectual Property Organization)の電子図書館で参照可能です。
・表示例:WOXX/XXXXXX
(参考)[International Application Number: PCT/JP200X/0XXXXX]
【再公表特許】
再公表は、前記国際公開された日本語特許出願を「再公表特許」として特許庁が発行し、改めて日本国内において公開するものです。尚、「再公表特許」という名称ですが、特許権が付与されたことを示すものではありません。
・表示例:WOXX/XXXXXX
【公表特許公報】
公表公報は、PCT国際出願のうち、日本を指定国とする出願の日本語の翻訳文が提出されたものを特許庁が「公表特許公報」として発行するものです。尚、「公表特許公報」という名称ですが、特許権が付与されたことを示すものではありません。
・表示例:特表平XX-5XXXXX、特表20XX-5XXXXX
【公報発行予定】
各公報は、原則として以下のルールで発行されています。
・特許(掲載)公報は、毎週水曜日発行(水曜が祝祭日の場合には木曜発行)
・公開公報(公開特許公報、公表特許公報、再公表特許)は、毎週木曜日発行(木曜が祝祭日の場合には金曜発行)
【まとめ】
各種公報を正しく理解して利用することで、自社の研究開発に役立てて頂きたいと思います。不明な点があれば、まずは専門家に相談して頂きたいと思います。
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