【民事保全の制度とは】
民事保全制度は、一定程度の権利が認められ、かつ緊急性の認められる事件の場合、裁判所の許可を得て、財産の現状を維持させるための制度です。
民事の紛争で相手方から強制的に債権を回収する場合、まずは訴訟を提起し、判決確定後に強制執行の手続きを行うことになります。これらの裁判上の手続きには、ある程度長い時間が必要になります。手続きの間に、相手方が財産を隠してしまったり、財産を処分してしまったり、判決が出るまでの間放置していることにより回復できない損害が発生してしまうケースもあります。このような事態を防ぐために民事保全の制度はあります。
【民事保全制度の種類】
・仮差押え
たとえば、貸金返還請求事件や債務不履行に基づく損害賠償請求事件のような金銭債権がある場合に使える制度です。債務者の預金などの債権や不動産、動産等を仮に差し押さえるための手続きです。
・仮処分
たとえば、明け渡しや引き渡しを求める際に、目的物の現状を維持する必要がある場合に利用できる制度です。不動産等の特定の物について、債務者の処分を禁止したり、債務者が占有を他に移転したりすることを防ぐことができます。
上記仮処分は、係争物に関する仮処分ですが、仮処分には仮の地位を定める仮処分もあります。先程の係争物に関する仮処分では、目的物の現状を維持する目的がありましたが、仮の地位を定める仮処分では、現状を変更する暫定的な処置をすることにより権利の維持や実現を図る手続きです。たとえば、不当解雇を争う事件で利用できる制度です。
【民事保全制度の利用】
民事保全の手続きはあくまで仮のものです。本案訴訟の終了までに現在の状態のまま保全するための手続きです。債権者の一方的な申し立てによっても発令されますので、債務者の損害を与えた場合に備えて、担保の提供が必要です。
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