部分意匠制度導入前は、意匠法第2条にいう「物品」とは独立した製品として流通するものと解されていたため、独立した製品として取引対象とならない物品の“部分”に係る意匠は、意匠法の保護対象から外れていました。したがって、他人の意匠の特徴的な部分を含みつつ、全体としては非類似の意匠とする巧妙な模倣を意匠権により取り締まることができない状況にありました。そこで、意匠法第2条にいう「物品」の定義に「物品の部分」が含まれることを明記し、物品の部分について独創性の高い意匠については、部分意匠として保護するようになりました。
詳しくは、(a)その部分が含まれる物品が、意匠法の対象物品であり、(2)その部分が、その物品全体の形態の中で一定の範囲を占めていること、(3)その部分が、その物品において、他の部分と比較可能なものであること、が求められます。
【部分意匠制度の導入前後における比較】
上図は特許庁HPより抜粋。
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_ishou/bubun_isyou/bubun_ishou_dounyu.htm
【願書の記載】
部分意匠制度を利用した意匠登録出願を行う場合、通常の意匠登録出願とは一部異なる記載になる点に留意する必要があります。以下主な点について記載します。
・【部分意匠】の欄を設けること
【意匠に係る物品】の欄の上に【部分意匠】の欄を設けます(様式 2 備考 8)。
・【意匠に係る物品】の欄
「意匠登録を受けようとする部分」は物品の一部分の形態ですが、【意匠に係る物品】の欄には、物品“全体”としての「物品の区分」を記載します。
例:カメラのグリップ部分にについて部分意匠として意匠登録を受けたいケース
正:カメラ
誤:カメラのグリップ部分
・【意匠に係る物品の説明】の欄
部分意匠においては、「意匠登録を受けようとする部分」の用途及び機能も、重要な判断要素となりますので、図面のみでは「意匠登録を受けようとする部分」の用途及び機能がわかりにくいと思われるときには、当該部分の用途及び機能の説明も記載することが必要です。
・【意匠の説明】の欄
全体意匠の場合に記載する必要がある内容の他に、「意匠登録を受けようとする部分」の特定方法や、「意匠登録を受けようとする部分」以外の「その他の部分」のみが表れる図について省略を行った場合にその旨を記載します。
・「意匠登録を受けようとする部分」の特定方法についての記載
①図面において、例えば、「意匠登録を受けようとする部分」を実線で描き、「その他の部分」を破線で描く場合は、【意匠の説明】の欄に「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」と記載します(様式 6 備考11)。
②見本、ひな形については、見本、ひな形における「意匠登録を受けようとする部分」の表し方に従って、例えば「黒色で塗った部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」のように記載することが必要です。(様式8 備考3)
③図面代用写真については、撮影された被写体の「意匠登録を受けようとする部分」の表し方に従って、例えば「黒色で塗った部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」のように記載することが必要です。
特許庁審査基準ガイドラインより抜粋。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/h23_zumen_guideline/02.pdf
【まとめ】
部分意匠制度は、通常の意匠登録出願とは異なる特殊な手続きですので、物品の部分について独創的なデザインを創作された場合には、まずは専門家へご相談下さい。
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