改正前(関連意匠制度の導入前)の意匠法における類似意匠制度は、自己の登録意匠にのみ類似する意匠(一つのデザイン・コンセプトに関連するバリエーションのデザイン)を登録することにより、本意匠の類似の範囲を明確化し、かつ、もとの意匠権の保護範囲を拡張することにより保護強化を図ったものでした。しかしながら、意匠権侵害訴訟においては、類似意匠に基づく侵害の成否は訴訟の対象とならず、専ら本意匠の意匠権の侵害の成否としてのみ訴訟が進められ、類似意匠の意匠権独自の効力範囲については殆ど認められませんでした。
かかる状況に対して、一つのデザイン・コンセプトに係る同時に創作されたバリエーションのデザイン、即ち、類似意匠であっても本意匠と同等に保護すべきであること、類似意匠の意匠権に基づき別個に侵害訴訟を提起することができるべき、との要望がありました。
これを受け、所定の条件下、類似意匠については、それぞれが独自の効力を有する意匠として登録を受けることを認め、意匠権の効力の及ぶ範囲について類似する範囲が相互に重なりあっている関連意匠制度が新たに創設されました。
【関連意匠として登録を受けるための主たる要件】
① 本意匠と同じ出願人であること(判断時:登録時)
② 本意匠に類似する意匠であること。
③ 本意匠の出願日から意匠公報の発行日前までに出願されていること。
本意匠が登録査定を受けたことを見たうえで、これと類似する意匠を関連意匠として追加的に出願することが可能です。
④ 関連意匠にのみ類似する意匠でないこと。
⑤ 関連意匠についても、新規性、創作非容易性等の要件を満たしていること。
【願書の記載】
・【本意匠の表示】の欄を設けること
本意匠の表示の欄を設け、本意匠の出願日や整理番号、又は出願番号を明記します。
【登録例】
出典:左上から順に、意匠登録第1118554号、第1119071号、第1119072号、第1119073号、第1119074号、第1119075号、第1119076号
・関連意匠は、本意匠の意匠権の設定の登録の日から20年をもって消滅します(意匠法21条2項)。関連意匠の登録が、本意匠の登録より遅くなった場合でも、関連意匠の存続期間は延長されません。
他方、関連意匠にも独立の意匠権が認められているため、本意匠が、放棄、登録料の未納、無効審決によって消滅した場合でも、関連意匠の意匠権は存続します。
【まとめ】
デザインのバリエーションについて創作された場合には、関連意匠制度を利用することで効果的に権利を取得することが可能です。まずは専門家へご相談下さい。
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