民事保全事件等で預け入れた供託金等は、事件が終了したときに担保取消決定申立により取り戻すことができます。担保取消手続きに必要な書類はどのような事情によって担保を取り消すかによって異なります。
【担保権利者の同意がある場合の担保取消申立】
民事保全等の裁判所での手続きの中で、現金供託等の立担保を行うことがあります。民事保全等の裁判所の事件が終了すると、この担保は取り戻すことができます。しかし、民事保全事件等の事件が取下げ等によって終了するだけでは担保を取り戻すことができません。担保を取り戻すためには、まず、担保取消決定申立といって、担保を取り消す手続きが必要になります。
担保取消決定申立には大きくわけて、3つのケースが考えられます。担保事由消滅の場合、担保権利者の同意を得た場合、担保取消しについて担保権利者の同意があったとみなされる場合です。
担保権利者の同意を得た場合というのは、担保権利者(被供託者)が担保に対する権利を放棄することについて同意した場合です。担保権利者が担保の取り消しに同意していますので、供託者はいつでも担保取消申立てをすることができます。訴訟外の和解でよくみられるケースです。
【担保権利者の同意を得た場合の担保取消申立に必要な書類】
・担保取消申立書
事件番号・事件名、申立人・被申立人の名前、供託の場合は供託物の特定のために供託金等の記載が必要です。
・供託原因消滅証明申請書
供託による担保の取戻しの場合必要になります。担保取消決定が出されたのち、供託原因消滅証明書を取得し、法務局に提出することになります。この証明書が発行されるのは、担保取消決定が確定した後ですが、実務上、担保取消申立て時に申立書と一緒に提出します。
・担保権利者の同意を得たことを証明する書類
本案訴訟で和解や調停が成立し、和解調書や調停調書の中に「担保取消しに同意する」旨の記載がある場合、その和解調書や調停調書の正本とコピーを提出します。この和解調書や調停調書の正本は、原本照合のあとに返してもらえます。
訴訟外で和解が成立した等、訴訟外で同意を得た場合、同意書が必要になります。担保権利者の訴訟代理人が同意する場合は、担保権利者の訴訟代理人名で同意書を作成し、担保権利者から訴訟代理人への委任状を添付します。担保権利者が訴訟代理人を立てず、担保権利者本人が同意する場合は、同意書に担保権利者の実印を押印し、その印鑑証明書を添付します。
・即時抗告権放棄書
担保取消決定後、即時抗告期間の経過を待たなくてもよいように、担保権利者に即時抗告権放棄書を作成してもらい提出します。即時抗告権放棄書を提出しておくと、担保取消決定は即日確定します。担保取消決定の確定までにかかる期間を短縮することができます。
・担保取消決定正本の請書
「担保取消決定正本を受け取りました」という内容の書面を予め提出しておきます。これを提出しておくことにより、担保取消申立人(供託者)への担保取消決定正本の送達が省略されます。この担保取消決定正本の請書は、申立人と被申立人連名で出すこともできます。被申立人(担保権利者)の担保取消決定正本の請書を提出することで、被申立人(担保権利者)への担保取消決定正本の送達が省略することができます。
・郵券(郵便切手)
被申立人(担保権利者)作成の担保取消決定正本の請書を提出していない場合、担保取消決定は被申立人(担保権利者)に送達されます。そのため、郵便切手を予め裁判所に提出しておく必要があります。郵便切手の金額は、仮差押の取下げと一緒に担保取消申立をする場合は、必要な郵便切手の金額が少なくすみます。いくら分の郵便切手が必要か、予め裁判所に確認することができます。
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