商標の国際登録に関して、「マドリッド協定議定書」に基づく国際登録出願及び国際商標登録出願という制度があります。前者は、同制度の下、我が国から加盟国へ出願するものを指し、後者は、加盟国から我が国を指定国として出願するものを指します。
同制度によれば、一つの手続きで複数の国々へ出願することができ、諸外国での商標権の取得が格段に効率的となります。
以下に、「マドリッド協定議定書」に基づく国際登録出願について詳しくみてゆきます。
「マドリッド協定議定書」に基づく国際登録出願は、通常は、各国別に発生する出願手続きを一元化し、国際事務局への一つの出願手続で、指定した国それぞれに出願した場合と同等の効果を得ることができる商標の国際登録制度です。
通常の海外出願のように、現地代理人を介して手続する必要がないため、出願時の費用面でのメリットが大きいこと、また、国際登録簿により一元管理し、変更・更新・保護を求める国の追加も1つの手続で行うことができるため、手続き面でもメリットがあります。
尚、「世界共通の商標権」ができたわけではなく、審査国であれば、各国の「商標法」に基づいて審査されます。
【加盟国】
103か国(119の領域をカバー/2019年1月15日現在)。これらの国々で世界貿易の約80%を占めると言われています。
https://www.wipo.int/export/sites/www/treaties/en/documents/pdf/madrid_marks.pdf
【手続】
同制度を利用して出願する前提として、我が国において商標登録出願(基礎出願)又は商標登録(基礎登録)が必要となります。
国際出願の手続きは、保護を希望する商標、国、指定商品・役務等を記載した出願書類を特許庁へ提出します。このとき、商標・名義人は基礎出願又は基礎登録と同一であることが求められ、指定商品・指定役務は基礎出願又は基礎登録の範囲内であることが条件です。
国際事務局(WIPO※1)にて方式的な審査が行われ、その後、各指定国での審査に付されます。
注1:WIPO:World Intellectual Property Organizationの略。ジュネーブ(スイス)にある世界知的所有権機関。
【保護期間】
保護期間は、国際登録の日から10年間です。
【メリット】
あ)経費節約
各国へ直接出願する場合は、各国代理人を介して手続を行う必要があるため必ず「現地代理人費用」が発生しますが、マドプロ出願の場合は現地代理人を選任する必要がありません。
い)迅速な審査結果
マドプロ出願の場合、各国は審査期間が原則18ヶ月以内に制限されますので、出願後、遅くとも18ヶ月後にはその国での権利発生の有無を確認できます。
う)事後指定
マドプロ出願では『事後指定』という手続きにより、当初指定していなかった国や新しく加盟した国を追加することで国際登録の保護の拡張を図ることが可能であり、当該登録を一元管理して維持することができます。
【デメリット】
あ)
加盟国でない、一部の国、領域については、マドプロ出願を利用できません。
い)
国際登録日から5年を経過するまでの間に、基礎となる出願が拒絶されたり、基礎となる登録が無効とされたりした場合には、国際登録も自動的に取り消されます(セントラルアタック)。よって、我が国の商標登録出願を基礎としてマドプロ出願を利用する場合には、当該出願の登録を確認後、速やかにマドプロ出願を行うのが安心です。
【まとめ】
「マドリッド協定議定書」に基づく国際登録出願を利用するか否かは、メリット、デメリットを十分に理解した上で利用の是非を決める必要があります。まずは専門家へご相談下さい。
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