法上、原則として一つの物品に対して一つの意匠出願でないと登録されません(一意匠一出願の原則)(意匠法7条)。しかし、複数の物品からなるセット物のデザインという実態もあり、このような意匠に対して購買意欲が掻き立てられるケースも多々あります。
かかる実態に鑑みて、同時に使用される二以上の物品であって経済産業省令で定めるもの(「組物」)を構成する物品に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、意匠登録を受けることができる規定が設けられています(意匠法8条)。
「経済産業省令で定める組物」とは、意匠法施行規則8条および意匠法施行規則別表第2で具体的に定められており、「一組の装身具セット」「一組の台所セット」「一組のオーディオ機器セット」など56物品に限られています。例えば、「一組の装身具セット」であれば、ネックレスとイヤリングのセット全体を1つの意匠として登録するというものです。
【組物の意匠として登録を受けるための要件】
(ア)経済産業省令で定めるものであること(意匠法8条、意匠法施行規則8条、別表二)
規定の56種類以外は、組物として意匠登録を受けることができません。
(イ)構成物品が適当であること(意匠法8条、意匠法施行規則8条、別表二)
定められた構成物品以外のものや、不適切なものが含まれている場合、定められた構成物品の一つしか記載されていない場合は、構成物品が適当ではなく、登録が認められません。
(ウ)組物全体として統一があること(意匠法8条)
【願書等の記載の留意点】
・【意匠に係る物品】の欄には、別表二に掲げられた組物の「一組の〇〇セット」と記載します。その他【意匠に係る物品の説明】【意匠の説明】の欄は、通常の意匠登録出願と同じです。
・図面については、以下に留意します。
(ア)組物の構成物品の個々の形態を表せば、組物の意匠を十分表すことができるというケースは、各物品について、それぞれ「一組の6面図」等を記載します。
(イ)「組物の意匠」が組み合わせた状態で統一感を有する場合は、各物品について、それぞれ「一組の6面図」等を記載するとともに、全構成物品が組み合わされた状態の形態について、十分表現された必要図を記載します。
【登録例】
以下の登録例「一組のオーディオ機器セット」は、チューナー、CDプレーヤーなどの全体を一つの意匠として登録を受けています。
出典:意匠登録第1305169号「一組のオーディオ機器セット」
【まとめ】
複数の物品が全体として統一感のあるデザインを創作された場合には、組物の意匠を利用することで効果的に権利を取得することが可能です。まずは専門家へご相談下さい。
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