意匠の国際登録に関して、「ハーグ協定のジュネーブ改正協定」に基づく国際出願という制度があります。同制度によれば、一つの手続きで複数の国々へ出願することができ、諸外国での意匠権の取得が格段に効率的となりました。
ハーグ協定ジュネーブ改正協定に基づく国際出願は、各国別に発生する出願手続きを一元化し、国際事務局への一つの出願手続で、指定した国それぞれに出願した場合と同等の効果を得ることができる意匠の国際出願および登録システムです。
なお、「世界共通の意匠権」ができるわけではなく、審査国であれば、各国の「意匠法」に基づいて審査されます。国際出願は、出願日から6か月後に国際公開された後、無審査国では権利の効果が発生し、実体審査国では国際公開後遅くとも12か月以内に審査を行い、登録になると権利の効果が発生し、無審査国では審査を経ずに権利の効果が発生します。
日本は、ハーグ協定のジュネーブ改正協定に加入し、平成27年5月13日より、この協定に基づく意匠の国際出願が可能となりました。
【加盟国】
ハーグ協定の1999年ジュネーブ改正協定へは、2018年11月のベリーズの加盟を以て60の国と地域が加盟しています(ハーグ協定の締約国総数は70)。
【手続】
国際出願の手続きは、保護を希望する意匠・国等を記載した出願書類(英語、仏語、西語のいずれかで作成)をWIPO国際事務局へ提出します。日本国特許庁経由でも、WIPOへ直接提出することも可能です(郵送、Fax、E-filingから選択可)。最大100個の異なる意匠を一つの出願で行うことも可能です。マドプロ商標とは異なり、日本における本国出願・登録は必要なく、また、日本を国際出願の指定国とすることも可能です(自己指定)。
【保護期間】
保護期間は、国際登録の日から5年ごとの更新により最低15年間です。
【メリット】
あ)出願手続の簡素化
一通の願書を国際事務局に提出することで複数の加盟国への出願効果が得られ、最大100個の意匠まで一出願に含むことが可能です。
い)出願費用の削減
出願代理人の選定は任意なので、代理人費用を削減することができ、ハーグルートの方が安価になるケースが多々ある(意匠や国の数によります)。
う)登録の時期の明確化
ハーグルートの出願は、無審査国であれば国際公開から6カ月、実体審査国であれば遅くとも12か月で登録可否が分かります。
え)国際登録の一元管理
権利の更新や移転等の手続は出願人が国際事務局に対して行い、国毎の手続が不要。
【デメリット】
あ)
日本語で出願書類を作成することはできません。
い)
登録の可否に関わらず、出願内容、拒絶理由、引用例が公開されます。日本では登録に至らなかった場合には、拒絶理由は公開されません。
【まとめ】
ハーグ協定による国際意匠出願によれば、経費節約などのメリットはあるものの、登録に至らなかった場合でも出願意匠が公開されるというデメリットについても十分理解の上、同出願制度を利用するか否かを決める必要があります。まずは専門家へご相談下さい。
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