企業会計上の利益と法人税法上の所得
個人の所得に対しては所得税が課され、法人の所得に対しては法人税が課されることになっています。
「所得」とは、会計上の利益と同じようなものであり、収益から費用を差し引いてもとめられます。
しかし、
「利益」は企業の財政状態及び経営成績の把握のためのもの
「所得」は担税力に応じた課税公平の実現のためのもの
である点が異なります。
つまり、
法人税法上の「所得」金額と企業会計上の「利益」には異なった目的があり、
必ずしも一致しません。
所得金額=会計上の利益+申告調整
=益金の額ー損金の額
♦益金と損金
上記の計算式のとおり、法人税法上「所得」は益金から損金を引いて求めます。
法人税法上と会計上の収益・費用・と益金・損金の差異は「別段の定め」として規定されています。
「別段の定め」とは、
会計上の収益・費用に計上されていても、税法上それを否認したり、
会計上の収益・費用に計上されていなくても、税務上、それを認めたりするものです。
なお、別段の定めがある項目については、日常経理の際仕訳時に注意が必要です。
法人税の所得金額は、
企業会計上の利益に「益金算入・損金不算入」の項目を加算し、
「益金不算入・損金算入」の項目を減算して求めます。
このような計算方法を取るのは、会計上の利益と税法上の所得は多くの部分が一致しているという性質を利用して、
益金・損金を一から計算する手間を省いているのです。
このように法人税の申告書上で決算利益との食い違いを調整することから「申告調整」といいます。
申告調整事項は、法人税法による規定に従って申告書上で処理され、法人税申告書の別表4と呼ばれる書類に内容を記載します。
♦加算減算項目
《加算項目》
会計上の利益よりも法人税所得が大きくなります。そのため、
損益計算書の利益をもとに計算される法人税の額よりも実際の納税額が増加する結果となります。
( 法人税額等・住民税・罰科金・交際費限度超過額・減価償却費超過額 等 )
《減算項目》
会計上の利益よりも法人税所得が小さくなります。そのため、
損益計算書の利益をもとに計算される法人税の額よりも実際の納税額が減少する結果となります。
( 受取配当金・資産の評価益・法人税等の還付額・減価償却費超過額認容 等 )
以上 法人税の基礎中の基礎知識でした。
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【元税務調査官:前原税理士 監修ブログ】
前原 貴之(まえはら たかゆき)
1967年生まれ。税理士。主に大阪市内及び兵庫県内の税務署法人課税部門で600社以上の法人の税務調査を担当し、印紙税調査等の広域指導も担当。2010年7月に姫路税務署法人課税部門の上席国税調査官を最後に退官し、民間企業での経理事務の経験するとともに税理士法人で税理士業務を経験後、Real&Cloudグループに入社。税理士元国税調査官の経歴を活かしながら税理士として活動するとともに、助成金、労務に強い社労士と連携して、ワンストップサービスに心掛けている。