入管法は日本人と結婚し、日本人の配偶者として日本で生活する外国人を対象とする在留資格として「日本人の配偶者等」の在留資格を定めています。
「日本人の配偶者等」の在留資格を取得するためには、法律上の婚姻が成立している必要があります。
事実上の夫婦として同居している場合、その間に子どもが生まれていても、法律上の婚姻が成立していなければ、上陸・在留に関しては日本人の配偶者として認められません。
また、日本への上陸・在留を有利にするため婚姻を偽装している場合には(仮に、形式的に法律上の婚姻が成立している場合であっても)、上陸・在留が認められないことは言うまでもありません。
当事務所では配偶者ビザの手続きをサポートしています。
配偶者ビザ申請の概要・注意点
配偶者ビザの手続きは、申請者本人が証明・立証資料を揃える必要があります。
そのため、ご自分で手続きするのは難易度が高く、書類不備・説明不足で不許可になってしまうケースが目立ちます。
近年、安定した在留資格である「日本人の配偶者等」を取得するため婚姻を偽装する事例が多発しており、入管当局による厳しい審査が行われています。
そのため、正真正銘の結婚だからといって、必ずしも許可されないのが現状です。
また、一度不許可になった場合の再申請や、特に海外から外国人配偶者を呼び寄せる手続きは不許可になりやすいので、行政書士のような専門家のサポートを受けることをおすすめします。
配偶者ビザ申請のポイント
- 結婚の信憑性
- 日本での生活を維持する収入があるか
1.結婚の信憑性
日本人の配偶者等の在留資格を得るためには、結婚の信憑性を立証していく必要があります。
もちろん偽装結婚ではなく、正真正銘の結婚である方が大多数かと思います。ただ、正真正銘の結婚であっても、それを立証できなければ許可は下りません。
特に下記に当てはまる方は注意が必要です。
- 注交際期間が短い場合
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交際期間が数ヶ月と、短い期間で結婚した場合は注意が必要です。
出会ってすぐに結婚というドラマチックなパターンもあるかもしれません。その場合「交際期間は短いが、正真正銘の結婚である」ということを第三者によって裏付ける必要があります。
配偶者ビザの申請時には、交際を裏付ける写真を提出します。デート先等でふたりで撮った写真が全くない場合は要注意です。
当事務所では初回ヒアリング時に状況を確認し、申請が難しいと判断した場合、申請を先送りして交際日数を重ねてからの申請を推奨することがあります。一度不許可になると、次の申請のハードルが上がるからです。
交際期間があまりにも短く不安な場合は、まず専門家に相談してみることをおすすめします。
- 注お互いに会った回数が少ない場合
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上記の交際期間が短い場合と一部重複しますが、お互いに会った回数が少ない場合も注意が必要です。
このパターンは日本と海外との遠距離恋愛を経て結婚し、日本に住むために配偶者ビザを申請する場合が当てはまります。
もちろん、お互いに日本と海外を行き来し、結婚までの過程が問題なければいいですが、付き合ってから1~2回しか会っていない場合は審査が厳しくなることが予想されます。この場合も交際日数を重ね、お互いの国を訪問し、実績を積み重ねていくことが必要になります。
- 注出会い系サイトやSNSを通して知り合った場合
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現在では、出会い系サイトやSNSを通して知り合い、交際に発展するケースは少なくありません。
真剣な交際もある一方で、ビザやお金を目的に出会い系サイトに登録し、日本人と結婚して、配偶者ビザ取得後は結婚の実態が全くないケースも多くあります。
そのため、入国管理局は上記のパターンの出会いからの結婚に関しては警戒を強めています。
申請にあたっては、交際に至った経緯から交際後の出来事、なぜ結婚しようと思ったのか、双方の両親は結婚の事実を把握してるのか等、詳細に文書にて説明する必要があります。また、それを裏付ける写真やメールのやり取りを提出できることも重要です。
2.日本での生活を維持する収入があるか
配偶者ビザの取得にあたっては、日本で生計を維持することができるかが重要なポイントとなります。
外国人配偶者側が既に日本で職に就いており、安定した収入があれば問題ありませんが、そうでない場合、結婚の信憑性を立証できても、日本人配偶者側の収入が低いと不許可の確率が高くなります。
外国人配偶者側の生活費が増えることによって、日本での生活が維持できなくなり、生活保護などの支援を受けるようでは、日本の国益にならないからです。
収入はどのように判断されるのか
配偶者ビザの申請には、直近1年分の課税証明書と納税証明書の提出が必要となります。そして、当該証明書に基づいて、日本人配偶者側の収入がどの程度あるのか判断されます。
稀に確定申告をされていない個人事業主の方がいますが、実際には十分な収入があっても、課税証明書に所得が反映されないため、無収入と判断されてしまいます。そのため、個人事業主の方で確定申告をされてない方は、確定申告を行ってから配偶者ビザの申請を行う必要があります。
収入が少ない場合の対処法
- (1)家族からの援助
- ご自身の収入が少なく、結婚後の生活が難しいと判断される可能性がある場合は、毎月安定的にご家族からの援助を受けられないか検討してみてください。ご両親に安定した収入があり、ご自身たちの収入が安定するまで援助を受けられる場合は、許可が下りる可能性があります。
- (2)今後の収入が見込めている場合
- 就職先は決まっているものの、昨年の収入がなく課税証明書に反映されていない場合、就職先からの在職証明書や雇用契約書を添付し、日本で安定継続的に生活できることを証明します。その他、ご自身の預貯金や不動産等の資産を見直し、外国人配偶者と共に、日本での生計を維持することができるかを検討してみましょう。
配偶者ビザの必要書類
- 配偶者が海外にいて日本に呼ぶ場合
- 配偶者が既に日本に在留している場合
で必要書類が異なります。
1.配偶者が海外にいて日本に呼ぶ場合
共通書類
- 在留資格認定証明書交付申請書/質問書
- 身元保証書
- 返信用封筒
外国人配偶者に関する書類
- 証明写真(4cm×3cm)
- パスポートのコピー
- 履歴書
- 卒業証明書
- 日本語能力認定書等、日本語能力を証明する書類(あれば)
- 本国で発行された結婚証明書+翻訳文
日本人配偶者に関する書類
- 戸籍謄本(婚姻の記載のあるもの)
- 住民票
- 直近年度の住民税の課税証明書
- 直近年度の住民税の納税証明書
- 勤務先から発行された在職証明書
- 勤務先の会社案内(HPのコピー等)
住居に関する書類
- 同居予定の不動産の賃貸借契約書(不動産を所持していれば登記事項証明書)
- 同居予定の不動産の写真
その他
- スナップ写真5枚以上(友人、双方の両親、結婚式、旅行に行った際に撮影した写真等)
- メールやLINEのやり取り(10枚以上)
2.配偶者が既に日本に在留している場合
共通書類
- 在留資格認定証明書交付申請書/質問書
- 身元保証書
- 返信用封筒
外国人配偶者に関する書類
- 証明写真(4cm×3cm)
- パスポート(原本提示)
- 在留カード(原本提示)
- 履歴書
- 卒業証明書
- 日本語能力認定書等、日本語能力を証明する書類(あれば)
- 本国で発行された結婚証明書+翻訳文
- 直近年度の住民税の課税証明書・納税証明書(日本で働いている場合)
日本人配偶者に関する書類
- 戸籍謄本(婚姻の記載のあるもの)
- 住民票
- 直近年度の住民税の課税証明書
- 直近年度の住民税の納税証明書
- 勤務先から発行された在職証明書
- 勤務先の会社案内(HPのコピー等)
住居に関する書類
- 同居中または予定の不動産の賃貸借契約書(不動産を所持していれば登記事項証明書)
- 同居中または予定の不動産の写真
その他
- スナップ写真5枚以上(友人、双方の両親、結婚式、旅行に行った際に撮影した写真等)
- メールやLINEのやり取り(10枚以上)
難民申請中から配偶者ビザへの変更について
難民申請から配偶者ビザへの変更は非常に難しく、どのような状況で難民申請を行ったのか、繰り返し行っているのか、経歴や日本人配偶者側の収入等によって大きく異なります。
難民申請の現在の状況
近年、難民申請者数が増えている一方で、難民認定手続の結果、日本での在留を認められた者は65人しかいません。難民申請中から日本人の配偶者等の在留資格に変更したいという方もいらっしゃるかと思います。
では、なぜ難民申請者数が増加の一途をたどっているのか。難民申請すると通常、審査結果が出るまで時間がかかります。そして、日本の制度では結果を待つ間、生活のために働くことが認められていました。仮に難民と認定されなくても「審査請求」という手続きを行えば、平均で2年半ほど働き続けることができたのです。
しかし、就労が認められたのは過去の話であり、現在は難民認定制度の運用が変わり、就労は認められていません。
難民申請中から配偶者ビザへの変更は難しい
上記の難民申請の現在の状況を踏まえると、「日本人の配偶者等」の在留資格に変更したい大多数の方は、難民申請が不許可になった方、または難民申請中(繰り返し申請をしている者を含む)の方であると考えられます。
日本への在留を目的とした審査請求、難民申請を繰り返していたり、難民でないのに難民申請を行っていると、「虚偽申請」をしていることになる可能性があります。
どのような状況で難民申請を行ったのか、繰り返し難民申請を行っているのか、1回目の難民申請中なのかを確認する必要があります。特に、一度、国が難民申請に対し不許可の結果を出しているのにも関わらず、再申請をしている場合は要注意です。
もし日本への在留を目的とした難民申請を行っていたのであれば、配偶者ビザへの変更が許可されるのは難しいです。また、交際期間が短いため、結婚の信憑性を立証するのが難しいケースも多いです。
変更の許可を得るには
難民申請の理由や、1回目の申請中なのか、繰り返し難民申請を行っているのかによって違いますが、まずは、
- 結婚の信憑性
- 日本で生計を維持することができること
を、しっかりと立証することが重要です。
ただ、上記2点をしっかりと立証できたとしても、難民申請から配偶者ビザへの変更許可は非常に難しいというのが現状です。特に、2018年からの「難民認定制度の運用見直し」以降、配偶者ビザへの変更許可が認められるケースは稀となっています。
ただ、結婚したにも関わらず、「日本人の配偶者等」の在留資格が永遠に認められないというわけではありません。一度、本国に帰国してもらい、在留資格認定申請によって日本へ呼ぶ方法などが考えられます。
一度、本国へ帰国すると、二度と日本に入国できないではないかと心配される方もいらっしゃいますが、そのようなことはありませんのでご安心ください。